正田おもいで話

医薬翻訳者・正田 誕生秘話(6)

(前回までのあらすじ)
医薬翻訳者になろうと志した正田は、勉強を始めて苦節1年3ヶ月、ついに翻訳会社から仕事のオーダーがくる。


この物語もそろそろ最終回です。

翻訳会社からきた短い「初仕事」は、どんな内容だったかというと、製薬会社と厚労省とのあいだの、医薬品承認申請をめぐる面談のやりとりの要約文を英訳せよ、というものだったと記憶します。

A4で2枚程度のものでしたが、これも難なく提出しました。ふうんこんなものも社内文書にあるんだなあ、という印象でした。翻訳料は、単位が会社ごとに違うのですがその会社は仕上がりの英文240ワード2500円と、新人翻訳者としてはかなりいいレートでした。

この出来がよかったのかその後は、この会社から続けざまに仕事がくるようになります。主に、製薬会社の治験(臨床試験)の自主監査(Self-audit)の報告書がきました。

「手順書に決められている○○が実施されていない」
というような文が大半のやつです。

どうも、この会社での文系の「正田さん」の位置づけは、

「論文の翻訳もたぶんできるのだろうけれどそれ以外の不定形な文書を読みやすい形に翻訳してくれる、便利な人」

だったようです。

この「自主監査報告」の翻訳だけで、すぐ月収20万くらいになりました。

この年の1月、2月には、ほかにもばらばらと、トライアルを提出した翻訳会社から「合格通知」が来、そして仕事が来ました。

私は忙しくなり、セミナーに通う時間もなくなってしまいました。いっぽう、実務こそが最もいい勉強の場である、というのはほんとだな、ということも実感しました。

別の翻訳会社からは、めずらしい「眼科マイクロサージェリー」の手技について書いた論文の日本語訳の依頼も来ました。

依頼主は個人の眼科のお医者さんだったそうで、こういう論文は、製薬会社の中で流通するものではないので、製薬会社出身ということはアドバンテージにはならないのです。むしろ、何でも勉強する「何でも屋」の文系翻訳者のほうに利がありました。というより、ほかの誰もが嫌がる文書なので、文系の私のところに来た、と思ったほうがいいようです。

この仕事が初めて来たときは大変でした。神戸大学医学部の生協に行って、眼科の役に立ちそうな本を片端から買い込み、1回の買い物で7万円をつかいました。そして論文の翻訳料は3万6千円、完全に赤字です。

ただ、このあと2,3回、この同じ依頼主から眼科の仕事が来たので、辛うじてペイしたかという感じです。

もともと、記者時代に脳死・臓器移植の取材に熱中したのがこうじて「医薬翻訳者」の道を志したので、こういう個人のお医者さんの勉強したいという志に役立つのは、願ってもないことだったのです。

主な収入源はれいの「自主監査報告書」と、ページ数が多く効率の良い、臨床試験の手順書(SOP)で、たまにそうした個人のお医者さんのための仕事をして、人の役に立ったことを実感していたという感じでした。

仕事として翻訳を始めた翌年には、
「ジャーナリズム出身で医薬翻訳者の珍しい人がいる」
と、業界誌にとりあげられたこともありましたが、
そのうち、コーチングと出会うと、矢も盾もたまらずそちらの勉強を始めて実務に入り、あれほどそのために勉強した翻訳は副業となり、やがて自然消滅した・・というのは、小冊子に書いたとおりです。


正田は、過去に会社勤めの世界からはじき出されてしまった人生のおちこぼれ。子どもを3人生んでそこそこ大きくなるまで育てて、今は余生の部分を生きています。

ぎこちないやり方ではありますが、残りの人生で仕事をつうじてひとりでも多くの人を幸せにすることができれば、生きてこの世の空気を吸っていることへご恩返しができるかな、と思います。


-----------------------------------------


現代っ子社員の「やる気」に、私たちはどう関われるのか?
東西の「やる気の達人」が集結する、関西限定スペシャルイベント!!
10・22 COACHING KANSAI 2005 お申し込みはこちらから


あなたもだれかのコーチになれる。
「経営者・管理者のためのコーチング講座(神戸セミナー)」第5期受講生募集中!修了生には、「CLS認定企業内コーチ」の受験資格が与えられます。詳細とお申し込みはこちらから



今日もこのブログを訪れて下さり、本当にありがとうございます!!

今日のランキングは?どうぞお急ぎでないかたは、ランクアップにご協力くださいませ笑い 

医薬翻訳者・正田 誕生秘話(5)

(前回までのあらすじ)
医薬翻訳者になろうと志した正田、勉強生活1年2ヶ月。薬科大の図書館から貴重な文献をみつけ、勉強のコツをつかんだ気になっている・・。


このころになると、課題の翻訳も、「正しいかどうか」ではなく、「より読みやすい、こなれた日本語にできるかどうか」が自分のテーマになっていました。


翻訳者は、とくに資格の必要な仕事ではありません。資格が存在するけどあまり重視されてないところは、ちょっと「コーチ」と似ているかもしれません。

翻訳会社は、けっきょく「実務」ができるかどうかをみます。その翻訳会社ごとの「トライアル」と呼ばれる文例の翻訳を一定の水準以上でクリアすれば、その翻訳者に仕事をくれます。

無職主婦歴8年、プロとしての翻訳歴なし、ただし通信社勤務時代に外電の英文和訳をやったことと医学取材をしたことを最大限アピールした「職務経歴書」をつくって、何軒かの翻訳会社に送ってみました。

当時通っていたセミナーを主催する翻訳会社は、もともとは
「1年間のコース修了後、優秀な人は当社の翻訳者として採用します」
とうたっていましたが、正直この会社のことは信用できないなと思いました。よその会社で腕試しをしてみたいと思いました。

また、ほかの受講生さんがたがぞろぞろついて歩いてる講師の先生も、恐らく頼りにならないなと思いました。
どうも、本気で「文系のこの人たちも、鍛えれば医薬翻訳の仕事ができるようになる」と思っているように思えなかったのです。今の仕事、コーチングからいえば非・コーチですね。


職務経歴書を送って、先方から「トライアル」が送られてくるかどうかが、1つの関門です。それを待つ間、また急にひらめいたことがありました。

和文英訳の問題が来たとき、論文の雛形をもっていたとしても、きれいに対応できるかどうかわからないな。

よし、だれかに英語の校正をしてもらおう。

幸い、近所の英語の先生をしているアメリカ人が快く引き受けてくれました。ふだんからビジネスマンの英語の校正(プルーフリーディングといいます)を頼まれているそうです。

これで英訳問題、万全。和訳は、もともと日本語を書いていた仕事ですから、万全。

年内にトライアルを2本送り、その年はそのまま過ぎました。

そして年が明け、2000年1月7日、電話がかかってきました。

「今から送る短い英訳の仕事をやってみていただけますか」

それは、暮れにネットで「翻訳者募集」をしていたので応募してみた東京の翻訳会社でした。トライアルでは、どんぴしゃ薬物動態の論文の英訳が課題に出て、かなり自信のある回答を送ったところでした。

(つづく)

---------------------------------------

子どもに「お駄賃制」を導入しました。

「おかあさんの指圧」
「ニューズレターの作成の手伝い」

はお駄賃の対象労働となり、それぞれ100円。

犬の散歩、食洗機に食器を入れる、洗濯物たたみなど、従来「義務」だった労働は、今後もお駄賃なし。

-----------------------------------------


現代っ子社員の「やる気」に、私たちはどう関われるのか?
東西の「やる気の達人」が集結する、関西限定スペシャルイベント!!
10・22 COACHING KANSAI 2005 お申し込みはこちらから


あなたもだれかのコーチになれる。
「経営者・管理者のためのコーチング講座(神戸セミナー)」第5期受講生募集中!修了生には、「CLS認定企業内コーチ」の受験資格が与えられます。詳細とお申し込みはこちらから



今日もこのブログを訪れて下さり、本当にありがとうございます!!

今日のランキングは?どうぞお急ぎでないかたは、ランクアップにご協力くださいませ笑い 

医薬翻訳者・正田 誕生秘話(4)

(前回までのあらすじ)
医薬翻訳者になろうと志した正田は、薬科大図書館で門前払いされるも、その門前払いした人が図書館の課長でかつご近所の人だったことがわかり、図書館への入館がゆるされる。


薬科大図書館へ、その当時何回通ったことでしょう。

あちらの雑誌をとってめくり、こちらの「薬物動態」の本を開き、と、児童館でおもちゃを手にとる幼児のように、次から次へと書物を当たりました。

「Aさん」は、とくに翻訳者になるためにはどの資料がいいよ、と示唆をくれたわけではありませんでしたが、これだけの宝の山を与えていただいたからには、自分で何としても必要な資料を見つける、と意気込んでいました。

ある日、みつけたのは、製薬会社の内部資料でした。こういうものが開架式で手に取れるところが、この図書館のすごいところです。

製薬会社別に、薬品別に、薬の開発から試験を繰り返して承認が下りるまでの文書の目録と、一部はその文書そのものが、1つのファイルにとじられています。

「すご~い、こういう順序で文書を作っていくんだ」

実務経験のない正田、新鮮で目が輝きました。
これらの文書が、実際、「医薬翻訳者」が訳す文書なのです。ふだん素人では絶対に目にすることができない文書です。

そのなかで、『薬理と治療』という題の雑誌名が目をひきました。多くの製薬会社が、この雑誌に論文を載せ、それを薬の承認申請に使っています。

この雑誌は、残念ながら薬科大図書館ではとっていませんでした。あまりレベルの高いほうの雑誌ではなかったようです。

(ようは、あまり出来のよくない論文でもアクセプトしてくれる、製薬会社にとって都合のいい雑誌だったようです)

しかし、あんまり頻繁に出てくるので、この雑誌をどうしても読んでみたくなりました。ネット検索して、バックナンバーを出ているぶん全部注文しました。

すると、あるある。
薬科大図書館でも探しあぐねていた、薬物毒性試験や薬物動態試験や臨床試験の、ようするに製薬関係の人にとっては「基本のき」の論文、医薬品の承認申請をするためにルーティンで作成する論文が、バックナンバーの同じ号に日本語と英語の両方で載っていたのです。

ラッキ~!!

これに載っている論文を続けて読んでいるうちに、実験をする人の頭の構造とか意図がかなりわかった気分になりました。

もちろん、同じ内容の英語、日本語どうしの移し替え例もわかってきました。ようするに、英語の辞書で引いてわかるものではなく、論文の特定の箇所に出てくるフレーズ同士の対応関係があるのです。

私は大いばりで、課題の薬物動態論文の回答を提出しました。

またあるときは、急に思いついて、薬科大の図書館にある実験教材ビデオを、その場にある視聴覚装置でみていました。

試験管での薬液の計りかた。ガラスの厚みで分量を見誤らないよう、薬液の水準と目線の高さを合わせて、分量をよみとる。

・・なんて、ひょっとしたら中学の理科でも習ったかも?というような、実験ビデオをずっとみていました。

あと、実験の論文によく出てくる高速液体クロマトグラフィ(HPLC)の操作方法のビデオもみました。「あー、これか」と思いながら。

でも、そんなことよりもっとワクワクすることがありました。

薬科大の実験施設の中に、薬物動態試験でつかう、放射能濃度を測定する「液体シンチレーションカウンタ」という大型の測定機器があるのをAさんからきいて、実物にさわらせてもらったのです。

放射線実験施設の中にあるので、入室はけっこう大変です。パッカード社の高いのとアロカ社の安いの(前者をつかったほうが論文としては格が高いのだとかききました。ごめんなさいアロカ社さん)と両方ありました。いずれも、論文にはよく出てくるタイプので、「会いたかったよお」と、すりすりさせてもらいました。
・・ばか。

と、あほなことをやっていましたが、論文の翻訳をするのにどう役に立ったのかというと、薬科大の学生として入って、製薬会社に入社して、こういう実験をやる人になったり、あるいは翻訳の成果物をつかってディスカッションする立場の人の人生を少しでもイメージしてみるというか、その人たちの数十年来の時間をいっしょに過ごした気分になるというか。

ひとことでいうと、「疑似体験」ですね。

自己満足くさいですが、自分では役に立ったと思っているのでした。


さて、そうしているうちに時は晩秋。
この年度が終わると、翻訳の実務に入れるかもしれないということで、セミナーを一緒に受講していた人たちの行動パターンが決まってきました。
講師の男の先生に、セミナー後もずっとぶらさがって歩いている人。これが大多数。

それをぼーっとみている立場だったのが、私。

そろそろ、「実務」を意識してもいいころだ、というのは、なんとなくわかっていました。医薬翻訳の勉強をはじめてから、1年2ヶ月がたっていました。

それにしても、この秋は、私が勉強を始めてからいちばん密度の濃い勉強をした時間だったと思います。

(つづく)

----------------------------------------

自分のいちばん好きな自分でいよう。
たとえ人からどう思われても、
能力が高いと思われようと低いと思われようと、
そんなこと関係なく、
自分自身でいよう。

-----------------------------------------


現代っ子社員の「やる気」に、私たちはどう関われるのか?
東西の「やる気の達人」が集結する、関西限定スペシャルイベント!!
10・22 COACHING KANSAI 2005 お申し込みはこちらから


あなたもだれかのコーチになれる。
「経営者・管理者のためのコーチング講座(神戸セミナー)」第5期受講生募集中!修了生には、「CLS認定企業内コーチ」の受験資格が与えられます。詳細とお申し込みはこちらから



今日もこのブログを訪れて下さり、本当にありがとうございます!!

今日のランキングは?どうぞお急ぎでないかたは、ランクアップにご協力くださいませ笑い 

医薬翻訳者・正田 誕生秘話 (3)

(前回までのあらすじ)
医薬翻訳者になろうと志して薬科大の図書館に行った正田。しかし受付の女性に門前払いされる。数日後、見覚えのある女性が家の前に立っていた。


カンのいい読者のみなさまはお気づきでしょう。この女性は薬科大の図書館の受付にすわっていた、あのいじわるな(失礼)女の人でした。

実は、この人は当時のうちのマンションの上の階の住人でした。そして我が家は当時1階に住んでいて、マンションの住人全員と出入りのときに目が合う位置にいました。

さらに、ヒゲでロンゲの目立つ風体の夫に、小さい子どもがわらわら3人、という我が家は、いやでもマンションじゅうで人目を引く存在であったようです。

「あのときは失礼しました。どこかで見たことのある人だ、と思ったのです」

女性は言いました。

「私は薬科大図書館の課長をしております。今度いらしたときはこの名刺を受付にお見せください。正田さんの入館証をおつくりしますので」

え~、これっていいの?
でもうれしい、あの図書館をつかわせてもらえる。

繰り返し、お礼をいいながら、その名刺を受け取りました。

あとで知ったのですが、この女性、Aさんは映画監督のご主人とふたりでうちのマンションの12階に住んでおられましたが、やはり3人のお子さんがあり、子育て後に仕事に復帰された経歴をもつ人でした。

今どき、
「子どもが3人」
で、そして仕事に戻りたい、と行動していた私に、
「まあ、殊勝な」
と思ってくださったのかもしれません。

このAさんご夫妻とは、その後も子どもに物をいただいたり、うちに夕食にお招きしたりと、親しくお付き合いさせていただくことになりました。

小冊子をお読みになったかたは、正田がコーチングを学びはじめのとき、登場する映画監督と大学職員のご夫妻のことをご記憶かもしれませんが、このAさんのことであります。

(まだつづく)

----------------------------------------


現代っ子社員の「やる気」に、私たちはどう関われるのか?
東西の「やる気の達人」が集結する、関西限定スペシャルイベント!!
10・22 COACHING KANSAI 2005 お申し込みはこちらから


あなたもだれかのコーチになれる。
「経営者・管理者のためのコーチング講座(神戸セミナー)」第5期受講生募集中!修了生には、「CLS認定企業内コーチ」の受験資格が与えられます。詳細とお申し込みはこちらから



今日もこのブログを訪れて下さり、本当にありがとうございます!!

今日のランキングは?どうぞお急ぎでないかたは、ランクアップにご協力くださいませ笑い 

医薬翻訳者・正田 誕生秘話(2)

また長いシリーズを書きはじめてもうた^^
何回で終わるのかな~

さて、前回は「薬物動態」という、超チンプンカンプンの論文を課題にもらって往生したところまででありました。

わからないよ~。

しかし、このとんでもない「わからなさ」で、正田は急にムラムラ火がつきました。

なんか今までとはちがうやり方しないといけない。

今から思うと、それまで8年間子育てに明け暮れ、仕事の世界から離れていた私にとって、これは一種の「リハビリ」だったのです。

薬の世界・・図書館・・

そうだ、同じ東灘区内に神戸薬科大学というのがあるな。

地図を頼りに、行ってみました薬科大。

キャンパスをうろうろし、図書館をみつけ、入ってみました。

あるある、薬の論文の載った専門誌がズラリ。
どこから見ればいいかな。
それは、宝の山のようでもあり、しかし最初は何をどう見たらいいのかわからず、手当たり次第にそのへんの雑誌を手にとってみるだけでした。

実は、そこは近隣の薬科大の図書館でも珍しい、開架式中心の図書館で、その意味ではすごく恵まれていたのです。

(つまり、あらかじめ検索せずともめくらめっぽう本を開いてみることが可能だ、という意味で)

が・・。

図書館から出ようとすると、受付の中年女性に呼び止められました。

「もしもし、入館証をお持ちですか」

「いえ・・ただの近所の者です」

「困ります。ここは本学の学生、教職員と、提携関係のある製薬会社の職員のかたにだけ、入館証を発行しているんです。どなたの紹介でもないんですね?」

けち~。
せっかく宝の山に当たったと思ったのに。

すっかり腐って、家に帰ってほかの薬科大・薬学部を検索して当たってみて断られて、ということを繰り返していました。

うつうつと過ごしているなか、
ある日外から家に帰ってみると、
見覚えのある女の人が家の前に立っていました・・・

(つづく)


----------------------------------------


現代っ子社員の「やる気」に、私たちはどう関われるのか?
東西の「やる気の達人」が集結する、関西限定スペシャルイベント!!
10・22 COACHING KANSAI 2005 お申し込みはこちらから


あなたもだれかのコーチになれる。
「経営者・管理者のためのコーチング講座(神戸セミナー)」第5期受講生募集中!修了生には、「CLS認定企業内コーチ」の受験資格が与えられます。詳細とお申し込みはこちらから



今日もこのブログを訪れて下さり、本当にありがとうございます!!

今日のランキングは?どうぞお急ぎでないかたは、ランクアップにご協力くださいませ笑い 
livedoor プロフィール
タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ